Deeply Japan

Don't settle for shallow.

Saka-ba     酒場

日本には独自の酒場文化があります。日本の「居酒屋」と言われるスタイルの酒場は、他の国ではあまり見かけません。現代の日本の若者たちには企業がチェーン展開する大型の「居酒屋」が人気ですが、ここではオーナーが自ら切り盛りしている個人経営の「居酒屋」を、日本の酒場文化の象徴として考えることにしましょう。

カウンターがあってその向こうには、「大将」、女性であれば「女将」などと呼ばれる少し頑固な店主が立っています。あまり愛想はありませんが、怖がってはいけません。時に無作法な客を叱り付けることもありますが、決して腹を立ててはいけません。酒を飲むことは娯楽に違いありませんが、日本人にとって酒場は人生修行の道場のようなものです。酒場で恥ずかしくない振る舞いができることが一人前の大人である証なのです。
さて、そんな厳しくも楽しい日本の酒場をマスターするための心得を伝授しましょう。

001 Sake     酒

日本人が知らない日本酒の話

日本で「酒」といえば日本酒のことです。最近は日本のウイスキーが海外でも大人気だし、日本のワインもビールも焼酎も美味しいものです。でも日本で「酒」といえばやはり日本酒なのです。とにかく伝統が違います。時代劇で侍が酌み交わすのは日本酒と決まっています。

稲作文化の日本において米で造られる日本酒は、単なる嗜好品ではなく生きる糧ともいえる、生活と切り離せないものだったはずです。そして、古の日本人は独自に貴重な酒造りの文化を発達させてきました。日本人が言うと手前味噌ですが、日本人の酒造りは本当に優れたものです。

しかし実を言うと、現代の日本では日本酒はあまり人気がありません。ビールやワインの方がたくさん飲まれています。それは日本酒が美味しくないからではなく、日本酒のことをあまり知らない日本人が多いからです。不思議な感じですが真実です。いろいろ複雑な事情があるのです。
それはひとまず置いて。日本人が知らない日本酒の話、始めましょうか。

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Basic Understanding 知識編

Author坂嵜 透

Toru Sakazaki

合同会社酒場文化研究所 所長
コピーライター

1967年生まれ。長年広告業に携わる。一介の酔客であった頃に、純米酒の熱燗に出会い日本の酒文化の奥深さを知る。そうした日本酒本来の楽しみを味わえる場が少ないことに対する危機感から、2011年、東京・渋谷に「純米酒三品」を開店。2016年3月に合同会社酒場文化研究所を設立。広告会社を経営する傍ら、日本の酒造文化と酒場文化について研究を続けている。