Noh 能
日本が世界に誇る伝統芸能、「能」。「ミュージカル」や「オペラ」にたとえられることもあります。「囃子方(はやしかた)」の生演奏とバックコーラスの「地謡(じうたい)」が場面や情景を描写し、「シテ方(してかた)」「ワキ方(わきかた)」と呼ばれる演者の舞によって物語が展開されていきます。
舞台装置はほとんどなく、説明的な動きは極限までそぎ落とされているので、観客は自由に想像しながら観ることができる。観る側にとっても非常にクリエイティブな芸能といえます。
そもそもは神様に捧げる舞が芸術へと昇華したものですが、ユネスコの無形文化遺産第一号にも認定され(2001年)、その特殊な芸術性は世界的にも認められるところとなっています。
一方で、“600年以上にわたって継承されてきた世界最古の舞台芸術”とされながら、日本人でも「よく知らない」「観たことがない」という人が多いのはとても残念なこと。小難しく敷居が高いと思われがちですが、本当にそうなのでしょうか?
知識を総動員して鑑賞する、自身の感性だけを頼りにじっと眺める、美しい能楽堂で心地良くまどろむ(上手いほど安眠できるとの説も)…どれも正しい能の楽しみ方です。五感をひらいて、客席に座ってみる。まず必要なのは、それだけです。